MPEG2ビデオキャプチャーカード「Canopus MTV1000」
CanopusからソフトウェアMPEG2エンコード機能付きTVチューナーカード「WinDVR
PCI」が発売されて約半年、そろそろみんながより高い画質を求め始めてきたところにタイミングよく投入されたのが同社のハードウェアMPEG2エンコード機能付きTVチューナーカード「MTV1000」だ。
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少し大きめ。
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MPEG2ハードエンコードチップと言えば、IO-DATAの「GV-MPEG2/PCI」やメルコの「MEG-VC2」に搭載されているC-Cube製DVxploreなどが有名だが、「MTV1000」には、定価が約4倍の上位機種「MVR-D2000」と同じ松下製MN85560が搭載されており、画質には期待が持てる。また、ノイズの侵入を防ぐガスケットまで付属しており、効果のほどはよくわからないが、とりあえず同社の画質に対する意気込みが感じられる。しかし、ガスケットにはかなり厚みがあるため、装着するのに苦労した。
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松下水道哲学の賜物か?
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ガスケット・・・。
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TVを見たり、録画するためには、CanopusオリジナルのMEDIACRUISEを使用する。キャプチャー関係だけでなく、音楽CDやDVDの再生もできるという多機能なソフトだ。SPECTRAユーザにはお馴染みらしいが、初めて見るとまず驚かされるのがその大きさだ。そのサイズ594×212ピクセル。しかも、洗練された感のあるCanopusのイメージとはずいぶんかけ離れたイマイチなデザインだ。この点だけは明らかにWinDVRの方が勝っている。比較的動作が素早く、機能的にも充実しているだけに少し残念なところだ。
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大き過ぎ。(画面解像度1024x768)
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予約録画はTV Recording Managerを使用する。こちらはMEDIACRUISEと違ってシステムトレイに常駐する小さなソフトだ。iEPGには今後対応予定ということで作りは非常にシンプルだが、スタンバイから復帰して予約録画ができるなど、基本はしっかり抑えてある。ちなみに、アイコン右クリックで素早くTVを見ることもできる。
チューナーの画質はかなり鮮明で、ノイズもほとんど乗っていない。「WinDVR PCI」で少し気になったジャギーも見られない。色合いなどは自分の好みに調整できる。さすがに「画質優先主義」を掲げているだけのことはある。
チューナー入力キャプチャー画像(未加工)
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cm.bmp(Zip圧縮:885KB)
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しかし、Canopusのサイトのレビュアースガイドの補足で予め言い訳されているように、激しい動きのある画面ではコーミングが発生してしまう。速い横スクロールのテロップなどはかなり読みにくい。ちなみにコーミングはチューナーに起因するわけではないので、残念ながら外部入力でも同様だ。
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激しい動きのある画面では
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コーミングが・・・(原寸大)
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MPEG2エンコードのクオリティはやはりなかなかのものだ。各種パラメータもマニュアルでかなり細かく設定できるが、内部チューナーならプリセットの「普通」(5Mbps)ぐらいで十分だろう。このレベルになると目を凝らさないと本放送と区別できない。とは言っても、とてもDVDやDVにはとてもかなわないので過度の期待はしないほうがいいだろう。
MPEG1エンコード、特にVideoCD設定について言うと、VideoCDってこんなに汚かったっけ?と思うほど画質がよくない。ソースにもよるが、ブロックノイズが目立つ。別にMPEG2に見慣れてしまったからではなく、TMPGEncのVideoCD設定(高画質)と比べるとその違いは明らかだ。MPEG2がエンコードできるからといって、MPEG1の品質が高くなるというものでもないようだ。とりあえず、シャープネスやフィルタの設定によって多少はブロックノイズを軽減できるようなので試してみよう。
エンコード時の負荷はさすがにハード処理だけあってかなり低い。とは言っても、デコードはソフトウェアなので、録画しながら再生するタイムシフトは心配だ。タイムシフトはCanopusによると、「高画質」(8Mbps)でPentiumIII
866MHz以上ということだが、Celeron533A@800というハンパな環境でもなんとかなる。ただし、CPU使用率が90%以上になっているので、何か他のソフトを操作したりするとコマ落ちが発生してしまう。
CPU使用率(あくまで目安)
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状態
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MPEG2(5Mbps)
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VideoCD
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TV受信中
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1%
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TV録画中
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13%
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10%
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タイムシフト中
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83%
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30%
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CPU:Celeron800 OS:Windows2000
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音声の方はソフトウェアエンコードだ。負荷的には特に問題なさそうだが、音が少し小さい。MTV1000側には音量を調整する術がないので、一応サウンドカード側を弄ってみたが、調整することはできなかった。しかしそこはソフト、改善するのはそう難しくないはずだ。
このカードで密かに注目されているのがハードウェアDV-MPEG変換機能だ。TV録画という観点からは少し逸れるが、DVユーザには非常に便利な機能だ。これまで、DVカメラ等から取り込んだDV形式のAVIファイルをソフトでMPEG2などに高画質で変換するには実時間の何倍もかかったのだが、この機能を使えばほぼ実時間でエンコードすることができる。DV形式以外のAVIファイルであっても、720x480ピクセル、29.97fpsであれば通るようだ。サイズやフレームレートの異なるAVIや、MOV、VOBなど別形式のファイルについては、少々面倒ではあるが、一度対応形式に変換すれば恩恵を受けることができる。
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DV-MPEGファイルコンバータ
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ところで、MTV1000にはよほどコストを切りつめているのか編集ソフトが付いていない。せめてファイル分割ぐらいはできないと不便だ。フリーで何とかしたい場合は、TMPGEncのMPEGツールを使ってみるのも手だ。
惜しいのは「GV-MPEG2/PCI」や「MEG-VC2」に付いているようなテレビ出力機能がないことだ。ハードディスクビデオ(デッキ)のようにTVで見るためには、TV出力付きビデオカードやTV出力付きDVDデコーダなどが必要になる。だが、基板をよく見ると謎のコネクタがある。Canopusの伝統からしてこういうコネクタにはたいてい何らかのオプションが付けられるようになるので、いやが上にも期待してしまう。ここは是非ともオプションでMPEG出力カードを発売して欲しいものだ。ちなみにDVRaptorのRaptorBay接続用コネクタよりピンが多いので、単なる入力端子パネルなどでは済まされないだろう。
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期待のコネクタ
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かつてPCでVideoCDを見るためにはハードデコーダが必要だったが、今やDVDでさえソフトでデコードするのが当たり前だ。同様にエンコードについても近い将来ソフトで行うのが当たり前になりそうだが、リアルタイムエンコードにある程度のクオリティを求めるとなると、今はまだハードエンコーダを使った方がよさそうだ。MTV1000に気になる点はいくつかあるが、サポートの良いCanopus製ということもあって、特にソフトについては今後改善されていく可能性がある。チューナー内蔵、Windows2000正式対応のPCIカードという条件で絞ってしまうと、そもそも現時点ではMTV1000以外に選択肢はないのだが、単なるMPEG2エンコーダとしてのポテンシャルも高く、十分満足できる製品ではないだろうか。
2001/06/16
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