Xperiaを買いにいったら売り切れ、REGZA phoneを買いにいったら販売停止と、どうもスマホに縁がなかった私は、5年目のザ・ガラケー"N905i"とスマホもどきの音楽プレイヤー"iPod touch"という合わせ技でもスマホ未満の環境で慎ましやかに暮らしていた。しかし、この夏に入り、N905iが知らないうちにダウンするようになってきたため、今度こそはとスマホを探し始めた。
SHARP AQUOS PHONE ZETA SH-09D。(画面はハメ込み合成)
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それはちょうどdocomoの夏モデルの販売が始まった時期だった。多様なラインナップには目移りしたが、Xiと防水と無接点充電を条件にすると、"Arrows X F-10D"と"AQUOS PHONE ZETA SH-09D"の2機種に絞られた。いずれも、無接点充電と相性が悪いとされるNOTTVには対応していないが、おサイフケータイ、ワンセグ、赤外線通信等ガラケー機能は備えており、ほぼ全部入りのガラスマだ。しかし、その時点で発売されていたのはZETAのみ。F-10Dの発売まであと少しというタイミングで、待って待てないこともなかったが、F-10Dの前評判があまり良くなかったことと、ZETAというネーミングにちょっと惹かれたことから、ほぼ腹を決めて某家電量販店に向かった。店頭のデモ機で液晶の美しさとレスポンスの良さを体感し、自信が確信に変わったその時、目に入ったのは手書きの”品切れ予約受付中”の文字。ZETAに載っているQualcomm製2コアCPU"Snapdragon S4(MSM8960)"が供給不足になっているのが原因という。店員さんが執拗に薦める"GALAXY S III SC-06D"も同じS4なので、供給不足だけが問題とも思えないが、とにかくZETAの在庫がないことは間違いないようだ。またしても運命のいたずらに翻弄されそうになる私だったが、なにせ今回は、いつ携帯電話が使えなくなるかわからないというライフラインの危機だ。予約して待つ余裕も無いので、片っ端から思いつく店に電話をかけまくろうとしたが、意外にも一件目のディスカウントストアに在庫があり、めでたく購入となった。
ZETAはホワイト1色でカラーバリエーションがない。NOTTV搭載で型番も後継っぽい"AQUOS PHONE sv SH-10D"の方は3色あることからすると、ZETAにはあまり力が入っていなかったことが伺える。ホワイトは純白ではなくパールホワイトで、奇しくも以前買ったArrows Tabと同じような色になってしまった。色選びには迷わずに済むが、一色に絞るなら黒系の方がよかったかもしれない。形状は角張ったスクウェアタイプで液晶の縁も薄く、液晶画面の占める割合が約7割とあまり無駄がないが、あまり華もないデザインだ。唯一の遊びとなっているのが液晶の下にあるイルミネーションランプだ。amazonの"Kindle Fire"にでも付けたいような逆アーチ型で、虹色に光る。こんなものよりホームボタンでも付けて欲しいところだったが、慣れてくると案外なかなかよいものだ。
薄いカマボコ型。
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イヤホンマイク端子はキャップなし!
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こんなので防水大丈夫?
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ワイヤレスチャージャー(Qi充電器)。
電池パック単体でも充電可。 |
電源を入れてまず驚くのが液晶の美しさだ。色味の濃い有機ELとは違うすっきりとした鮮やかさがある。また、屋外での視認性もかなりよい。ZETAに採用されているSuperCGシリコン液晶は、透過性を高めてバックライトの消費電力を抑えるというもので、どちらかと言うとエコ的イメージが強かったため、あまり画質には期待していなかったが、その鮮明さは一時代を築いたAQUOSブランドの面目躍如といったところだ。
液晶サイズは720×1280ドットの4.7インチと今年の夏モデルの中でも大きい方だが、ホームボタンやバックボタンがソフトウェアキーになっているため、その分の720×96ドットの領域がアプリで使えない。とは言え、横向きにした時のソフトウェアキーボードのキーピッチは約9mm確保されており、両手親指入力するのに十分な長さはある。
結構、打てます。
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品薄となるほど大人気のCPU"Snapdragon S4"を積んでいるだけあって性能面も上々だ。ちなみに、Antutuのベンチマーク結果にあるGalaxy S IIIの性能が異様に高いが、おそらくこれは4コアCPUを積んでいる海外版のものと思われるので無視してよいだろう。続けてネットをしているときなど、裏面のスピーカー付近が温かくなってくるのがやや気になるが、CPU性能で困ることは当面ないだろう。意図せず再起動したり熱暴走するようなこともなく、非常に安定している。購入当初、標準ブラウザがよく落ちていたので先が思いやられたが、7/26のソフトウェアアップデートにより改善され、すっかり落ちることはなくなった。
Quadrant Standardでは5507。
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AnTuTuでは6559。
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Bullet Benchmarkでは70827。
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ユーザインタフェースとしては、docomo標準の"Palette UI"の他、"Apple IIc"やMac等、洗練されたデザインで有名なフロッグデザインと共同開発したというユーザインタフェース"Feel UX"も入っている。ホーム画面となる"3ラインホーム"は地味ながら使い勝手は悪くないが、汎用的なPalette UIからあえて替えるかというと微妙なところだ。プリインストールアプリは、辞書一式やSHARPの迷走サービス"GALAPAGOS"のリーダー等、それなりに入っているが、アンインストールできないことで悪名高いTSUTAYA TV等のタイアップ的な迷惑アプリは入っていなかった。
Palette UIのホーム。
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Feel UXの3ラインホーム。
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ロック画面(ウェルカムシート)から
音楽プレーヤの操作が可能。 |
ワンセグもあります。
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おサイフケータイもあります。
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GALAPAGOSも・・・。
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プリインストールアプリの中で、個人的に気になっていたのが"Smart Familink"だ。説明書きに"AQUOSブルーレイ"とか"Familink"とかマイナーなキーワードが並んでいるため、つい無効化してしまいそうなアプリだが、実は、立派なDLNA(DTCP-IP)クライアント機能を持っており、Arrows Tabに付いていた"Dixim Player"と同様、低価格高機能液晶テレビ"REGZA Z3"の録画番組を見ることができた。残念ながら、ちょっと古いBDレコーダー"BDZ-L70"の録画番組が見れないこともDixim Playerと同様で、やはり、REGZA Z3とBDZ-L70の間には見えない壁があるようだ。もっとも、トランスコード機能のないサーバでは、接続できてもまともに再生することはできないだろう。ZETAも防水なので、お風呂でテレビ(ワンセグ)やお風呂でビデオ(DLNA)ができそうだが、取説によると、常温(5〜35度)の水以外の液体をかけたり浸けたりするなと書いてあるので微妙だ。DLNAについては、フリーでありながらDTCP-IPに対応した太っ腹アプリ"Twonkey Beam"も利用できる。対応サーバもSmart FamilinkやDixim Playerと同等のようだ。しかし、少なくともデフォルトの状態では、Smart Familinkでは発生しないコーミングが発生するため、動きのある映像が見づらいのが残念だ。また、TVに動画をBeam(throw)するのが基本であるためか、操作方法には謎が多く、あえてこちらを使う必要はないだろう。
紹介ページのようですが、
ちゃんと 機能します。 |
AQUOSなら
いろいろできる らしいです。 |
AQUOSでなくても
DLNAは利用できます。 |
いきなりブラウザから始まるTwonky。
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でも、れっきとした→
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DTCP-IP対応DLNAクライアント。
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1900mAhと大きめのバッテリーを積んでいるのに加え、前述のSuperCG液晶や細やかな節電機能により、持続時間もなかなかだ。ブラウザ使用時にバッテリーがみるみる減ってくるのには驚くが、待ち受け中の消費電力の少なさは特筆ものだ。公称待ち受け時間490時間(3G静止時)はなかなか実証できないが、とりあえず普通に使っても、朝から晩まで1日は持ってくれる感覚だ。当初、USB出力バッテリー"モバイルブースター"を買うつもりでいたが、なくても何とかなっている。
エコ技ウィジェット
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普段使いの"技あり"モード
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最後の最後で"お助け"モード
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細かく設定できます。
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アプリ単位で設定可。
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ある日の記録(Battery Mix)。
未使用時の消費が少ない。 |
ZETAを選択した理由の一つであった無接点充電"Qi"については、思ったほど利便性を感じなかった。Micro-USBケーブル直刺しに比べると遥かに楽だが、給電用接点が2つちょこっと出ているようなシンプルなクレードルでも十分楽であり、その差はあまり大きくない気がする。また、充電器に本体を置いた際、充電器内部で、充電コイルが最適ポイントをいちいち探してモーターで動くので、いつか壊れやしないかと心配になってしまう。もちろん、技術的面白さはたまらないのだが、純粋な利便性で言えば、それほど重視すべきポイントではないかもしれない。
残念なのがカメラだ。ピンホールカメラのような32万画素の内側カメラはともかく、1210万画素の外側カメラに時折赤い偽色が出るのがいただけない。初めは、測定用の赤色LEDの光が映っているのかと思ったが、LEDが光っていなくても赤くなるので、根本的に問題がありそうだ。
付属品としては、Qiの充電器の他に、マイク付きヘッドセットとmicroSDカードが付いている。試供品とあって、ヘッドセットの音質はそれなりで、microSDカードの容量も2GBと心許ないが、とりあえず使えるので助かる。Qiの充電器は持ち運びに適さない大きさなので、家の外用にdocomo純正USB充電器"ACアダプタ03"を購入した。今やUSB充電器はコンビニでも買えるが、中には出力が小さくて、充電できなかったり、充電に時間がかかるものがあるので注意が必要だ。その点、ACアダプタ03は、純正の安心感に加え、コンパクトサイズに関わらず出力も1.0Aと十分で、値段も高くない。 当然、 充電時にはUSB端子カバーを開ける必要があり、防水パッキンの劣化が気にはなるところだが、標準のQi充電器より速く充電できてしまうというメリットもある。
別売りのACアダプタ03。USBケーブルがちょっと硬いので→
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ラスタバナナの充電・通信切替ケーブルと一緒に使ってます。
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液晶パネルには保護シートを貼らないと気がすまない貧乏性の私は、とりあえずELECOMのセミハードケースに付いていた保護シートを貼ってみた。すると、シートがパネル下まで届かないことが判明。ZETAの場合、液晶とイルミネーションランプが面一になっているのに、液晶部分しかカバーしていないのだ。液晶保護シートということで、液晶部分だけを保護できればよいということなのだろうが、たった7mm伸ばせないとは、一体どういう了見なのか疑ってしまう。別に買ったラスタバナナのシートは、パッケージ上では液晶部分のみとなっているのにかかわらず、実際はイルミネーション部分までカバーしており、うれしい誤算だったが、パッケージには正しいカバー範囲を記載してほしいものだ。
ZETAにはiPhoneやXperiaのようなオシャレ感はないが、条件としていた防水、無接点充電の他、美しい液晶、省電力、なかなかの処理性能と抑えるべきポイントは抑えてあり、カメラ画質さえ気にしなければ、実用性はかなり高い。少し気になった発熱については、この夏のモデルに共通のようだが、ZETAは熱くなっても50度を超えることはなく、使用上さほど支障もないので、比較的マシかもしれない。問題は入手性で、私が購入した後も、入手困難な状態は続いているようだ。もちろんZETAは悪くない選択だが、大人気を博すほどのものとも思えない。これは、CPUの供給不足によるところが大きいだろうが、他機種の不甲斐なさも一因と思わる。プラチナバンド対応が控えていることも考慮すると、今シーズンはスマホを買うタイミングとしてあまり良いと思えないので、私のように急を要する事態でなければ、次の冬春モデルを待ってみるのも手だろう。
NTTドコモ
AQUOS PHONE ZETA SH-09D (NTTドコモ)
NTTドコモ
AQUOS PHONE ZETA SH-09D (シャープ)
発売日:2012年6月29日
販売価格:70,350円(税込)
※画面キャプチャー方法:電源ボタンと音量ダウンボタンを同時に押す(シャッター音あり)。ワンセグ、DLNA等の動画再生画面はキャプチャーできない。Android SDKを使う方法でも不可。
(2012/8/18)
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