吸盤フックで浴室の壁に固定すると、夢のお風呂テレビ&ビデオに。
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湯船に浸かってぼーっとするのもよいが、ついつい寝てしまうのがよくない。天性のながら族(死語)としては、浴室でテレビでも見られるとよいのだが、壁面埋め込み式のテレビは工事が大変そうだし、防水のポータブルテレビはまともに電波を受信できそうな気がしない。しかし、よくよく考えてみると、今やリアルタイムでテレビを見ること自体がほとんどなく、見るならビデオの方だろう。防水のメディアプレイヤーならいろいろ選択肢がありそうだが、風呂に入る前にわざわざ動画をエンコードしたり端末にコピーするのは面倒だ。
そんな昨年の夏、防水ビエラワンセグ「SV-ME870」の存在を知った。すでに見向きもされないジャンルとなっているワンセグテレビだが、何気にDLNAクライアント機能が付いているのだ。これなら浴室でビデオが見られる。もちろんDLNAなので、事前のエンコードや転送は不要だ。これまでもDLNAクライアント機能を持つポータブルな端末はあったが、防水ではこれが初ではなかっただろうか。しかし、いかんせんパナソニックのDLNAは「お部屋ジャンプリンク」という、独自に一部を拡張したようなしてないような仕様となっており、接続確認済みリストを見ても他社製品が一切載っていないという唯我独尊状態で、ディーガもビエラもない我が家にとってはとても危険な製品だった。数ある規格モノの中でも、ことDLNAに関しては、単に面倒くさくて他メーカーとの接続検証をしていないというだけでなく、平気で接続できなかったりするので購入するのを躊躇した。とは言え、うちの浴室でビデオが見られる日が近いということは確かだった。
ドコモ版との外見の違いはFUJITSUロゴ。
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そうこうしているうちに秋になると、ドコモからAndroidタブレット「ARROWS Tab LTE F-01D」(以下F-01D)が登場した。世間的には「ドコモからもiPadっぽいのが出たね」ぐらい認識だったと思われるが、少なくとも私には、格好いいけど何に使うかよくわからないiPadなどとは比べ物にならないくらい魅力的だった。IPX5/7の防水とDTCP-IP対応DLNAクライアント機能を持ち、浴室でビデオが見られるというだけでなく、普通にAndroid端末としてネットやいろんなアプリが使えるのだ。こうなると、長風呂は避けられない。機能面では理想的なF-01Dであったが、ランニングコストが問題だ。未だにガラケーを使っている身としては、贅沢品のタブレットに毎月Xiの通信料を払うなど到底考えられない。タブレットを持ち歩きたい人も、屋外での通信はスマートフォンのデザリングを使いたいという人が多くて、現在の市場の状況に至っていると思われる。また、そもそもDLNAは家の中で使うもので、LTEである必要は全くなく、ドコモ的にもアピールが難しいところだろう。iPadには3G+Wi-Fi版とWi-Fi専用版があることから、ARROWS TabにもWi-Fi専用版があってもよさそうなものだったが、当時、Wi-Fi専用版については、売り場で聞いても不明、富士通に聞いても未定と言われた。仕方なく、一度ドコモから買ってすぐ回線を解約するか、どこかで白ロム版を買ってWi-Fiオンリーで使うか、もしくは、少し画面は小さいが、ガラケーからの脱却を兼ねて、F-01Dの縮小版のようなドコモのスマートフォン「ARROWS X LTE F-05D」で我慢するか迷っているうちに年が明け、気が付くと、ヨドバシのノートPC売り場に「ARROWS Tab Wi-Fi (以下Wi-Fi専用版)」が並んでいた。Wi-Fi専用版はさすがにドコモでは取り扱わないせいか、F-01Dと売り場が別になっていたため、少し発見が遅れてしまった。Wi-Fi専用版には32GB版のFAR75Aと16GB版のFAR70Aがあるが、用途的に本体にデータを溜める必要はなさそうなので、安い16GB版の方を購入した。ちなみに、 Wi-Fi専用版は今年4月からNTT西日本でもフレッツ光の端末として取り扱うようになっている。実際にどれくらい売れるかは別として、用途的にはXiよりフレッツ光 (+ Wi-Fi)の方がフィットしている。
この春、「SONY Tablet」の方も、Wi-Fi専用版が発売されるついでにDLNAのDTCP-IP対応が発表された。あちらは何といってもプレステソフトが遊べるのが魅力だが、何と言っても防水でないのが惜しい。テレビのある部屋で使う必要はあまりないだろうから、勉強部屋か枕元でコソコソ見るといった青春時代っぽい使い方になるだろう。
DigiOnのDixim Player
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フォルダ分けはサーバに依存します。
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サーバ一覧に載っていても・・・
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見れない場合があります。
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DLNA (DTCP-IP) 最大の問題がサーバとクライアントの接続性だ。ARROWS Tabに載っているDLNAアプリは知る人ぞ知るDigiOnの「Dixim Player」。PC版の「Dixim Digital TV Plus」はうちのDLNA環境で問題なく使えているという実績があるので、うちのDLNA機器がDixim PlayerというかArrows Tabの接続確認済みリストにどれひとつ載っていないことなど気にもしていなかったが、さすがはDLNA、甘くはなかった。数年来、うちでメインのDLNAサーバとして君臨しているソニーのBDレコーダー「BDZ-L70」にアクセスできないのだ。Diximのサーバ一覧にBDZ-L70の名前は表示されているのでネットワーク的な問題ではないだろう。受け入れたくない事実だが、Android版とPC版では対応接続機種が違うのだ。たまたま昨年末に買った東芝のDLNAサーバ・クライアント機能付き液晶テレビ「REGZA Z3」にはフル対応していたため、なんとか当初の目的を達成することができたが、危うくただの防水タブレットになるところだった。とりあえず、PC版と同程度になるようアップデートに期待したいところだ。ちなみに「TwonkyMedia」などの非DTCP-IP対応DLNAサーバにもアクセス可能だが、フォーマットの選り好みが激しく、見られないものが多々あった。
DLNAプレイヤーの宿命か、アプリを起動してから実際に動画を再生するまで時間がかかる。特にサーバがスリープ状態にあると、いつまで待っても接続できない場合がある。こういう場合は、ネットワークツールアプリ「Fing」など、Wake On Lanのマジックパケットを送信してくれるアプリを使って、寝ているDLNAサーバを起してやるとよいかもしれない。サーバが複数録画中や他にセッションを張っている場合などbusyな状態ではアクセスできなかったり不安定になったりするので、浴室に持ち込む際、裸でイライラしたくなければ、服を脱ぐ前にサーバの状態を確認しておくのが無難だ。
シークバーによるシーンサーチが可能。
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ジャンプするとバッファリング。
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ユーザインタフェースはシンプルで分かりやすいが、PC版と同様、操作感は今ひとつだ。特に再生中の操作はもっさりだ。一応、シーンサーチもできるのだが、無線LANも災いして、いちいちバッファリングで待たされるので、間違ってもCMスキップなどしようと思ってはいけない。一度再生し始めれば、映像自体は安定しており、カクついたり、途切れるようなことはあまりないが、低ビットレートにトランスコードしてくれないDLNAサーバが相手の場合、ビットレートの高いDRモードなどではカクついてしまうかもしれない。
ARROWS Tabには、面白機能として、本体に直接触れずに操作ができるというハンドジェスチャーコントロール機能がある。Diximでは、手を上下に振ると音量調整、左右に振ると動画のスキップができることになっているのだが、まともに反応したためしがない。ネタとしては面白いのだが、実用レベルに至ってないようだ。妙なところで誤作動されても困るので、機能はOFFにした。
気になる連続使用時間は、カタログスペックで動画再生時約10時間となっており、あまり心配はいらないが、ためしに実測したところ、DLNA再生1時間で5%程度しかバッテリーを消費しなかった。5〜10本の映画を一気に見られそうだが、実際浴室では、私の体力の方がボトルネックとなり、せいぜい30分、がんばっても1時間見るのがやっとだった。あまりの長風呂も危険なので、30分程度にとどめておいたほうがよいだろう。
PC版のDiximは単体で発売していることから、Android版の単体発売も期待されるところだが、玉石混交のAndoroid端末で動作保障するのは厳しく、サポートを考えると、どうしてもバンドル(プリインストール)になってしまうのだろう、と思っていたら、なんと、ドコモ傘下となったパケットビデオ社のDLNAアプリ「Twonky」シリーズが統合され、DTCP-IP対応した上、ドコモ以外の端末にも無償公開されることが発表された(パケットビデオのリリース)。「せっかく作ったけどサポートが面倒だからフリーでいいか、ドコモから金も入ってるし。」と思ったかどうかは知らないが、多くの機種でDLNA (DTCP-IP) が楽しめることになりそうだ。
左からヘッドホンジャック、microUSB、mini SD、miniUIMスロット跡地。
miniUIMスロット跡地には何か詰まってます。 防水なので、なるべく開け閉めしたくない。 |
IPX5/7の防水性に関して極限まで試す根性はないが、シャワーがかかるくらいは何でもなく、2度ほど手が滑って浴槽に水没したこともあったが、今のところ特に問題なく動いている。スペックに偽りないことを信じたい。
ARROWS Tabにはワンセグ機能も付いているのだが、案の定、うちの浴室では映らなかった。うちに限らず、浴室の配置的に内蔵アンテナでは受信が厳しいという家は多いだろう。うちにあった旧三洋のポータブルナビ「ミニゴリラ」と比べても受信感度がよくないため、あまり高性能なチューナではないということだろう。ちゃんと映ったとしても、10インチぐらいの画面サイズになると、ワンセグではどうしても荒さが目立ってしまうので、この際、ワンセグについては忘れてしまってもよいかもしれない。ここは、「お部屋ジャンプリンク」で実装されているような「ほぼリアルタイム配信」や、アイオーデータの地デジ配信機能付き無線LANルータ「WN-G300TVGR」のような無線LAN経由の受信に期待したいところだ。ちなみに、いかにもポシャりそうなオーラが出ているNOTTV受信機能は付いていない。
その他、F-01Dにも付いていない指紋認証センサーがなぜかWi-Fi専用版には付いているが、よほど家族に知られたくないような使い方をしない限り、使うこともないだろう。
10インチなのでソフトウェアキーボードもらくらく。
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漢字の手書きもなんとか。
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モバイル統合辞書
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いろんな辞書が入ってはいますが。
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Android端末なので、アプリはPlayストアから無料でいろいろ揃えられる。ARROWS TabにはDixim Playerの他に、ARROWSシリーズ共通の「富士通モバイル統合辞書+」などもプリインストールされている。「富士通モバイル統合辞書+」には、広辞苑をはじめ、29もの辞書が入っており、重宝しそうな雰囲気はあるのだが、ついついGoogleやWikipediaを使ってしまうため出番がない。誰かにARROWS Tabの価格妥当性を証明する必要がある場合は役に立つかもしれない。その他にも、スマートフォンと同様、自由にアンインストールできない迷惑アプリがテンコ盛りの状態なので、rootを取って消し去りたいところだが、ソフトウェアアップデートなどに支障があるといけないのでやめておいた。
上中央が電源ボタン。その下がカメラ。
右が音量ボタン。その下が指紋センサー。 |
機能面しか見ていなかったので、あまり気にしていなかったのだが、デザイン面もまずまずだ。画面が大部分を占めるゆえ個性の出しにくいタブレットにあって、なんとか個性を出そうという努力の跡が見られる。画面の周りはスピーカーのメッシュっぽくなっており、AV機器テイストを醸し出している。タブレットのスピーカーはよくわからない位置にありがちで、音も曇りがちになるのに対し、ARROWS Tabのスピーカーはしっかり前面にあり、音が明瞭に聞こえるような気がしないでもないが、所詮小さなスピーカーなので、音質には期待しないほうがよい。好き嫌いが分かれそうなのが裏面で、なぜか「ETERNAL WHITE」という光沢のパールホワイトのような色だ。普通なら裏面は黒かシルバーあたりになりそうなものだが、眩いばかりの白である。しかし、表面にコーティング加工のような少し手の込んだ仕上げとなっており、すぐに下地が出るといったことはなさそうだ。
真新しい液晶パネル、特にタッチパネルには保護シートを貼らないと気が済まない私だが、10インチもの大判サイズは初めてだった。まっさらなARROWS Tabに普通っぽいバッファローのアンチグレアタイプを貼ってみたところ、これがかなり難しく、多少腕に自身のあった私でも大量の気泡が残ってしまった。こういうところだけは神経質な私にはとても我慢ならず、すぐに剥がして丸めて捨てた。バッファローには他に、「絶対気泡ができない」というタイプがあるが、枠が大きく仕組み的にも邪道っぽかったので手を付けなかった。ふと目にしたラスタバナナの専用無気泡フィルム・アンチグレアタイプ(F-01D用)に貼り直したところ、正面上のセンサー用穴の周りが少し浮くのが若干気になるものの、一粒の気泡もなく貼れ、ひとまず心の平静を取り戻すことができた。
私のバスタイムはARROWS Tabを買ってから一変した。iPadをジップロックなどに入れて浴室で楽しんでいる強者もいると聞くが、ARROWS Tabなら浸水など気にせず安心して楽しめる。DLNAよりついついブラウザや別のアプリを立ち上げてしまうのはいいとして、湯船で寝てしまうようなことはなくなったし、ゆったりと有意義なバスタイムを過ごすことができるようになった気がする。ドコモからは、ARROWS Tabに続き、NECのMEDIAS TABやパナソニックのELUGA Liveなど防水&DLNA(DTCP-IP)機能付きタブレットが発表されているが、残念ながら前述の通りランニングコストの問題でヒットすることはないだろう。ただ、このまま防水タブレットが消えていっても困るので、スマートフォンのような通信キャリアOEM製品ではなく、ノートPCのようなメーカー自社製品として市場が形成され、製品の選択肢が増えていくことを期待したい。
充電スタンドは比較的コンパクトなのはよいが、
位置が合わせづらく、載せにくい。USB連携機能はなし。 |
富士通 ARROWS
Tab Wi-Fi
発売日:2012年1月19日
直販価格:FAR75A (32GB) 67,800円、FAR70A (16GB) 59,800円
NTTドコモ
ARROWS Tab LTE F-01D
発売日:2011年10月19日
直販価格:71,190円
(2012/6/1)
10月1日にAndroid 3.2から4.0.3へのバージョンアップ(無償)が可能になりました。一度公開が中断されるというアクシデントがありましたが、無事再開されて一安心。見た目の違いはあまりありませんが、Chromeがインストールできるようになったり、スクリーンショットが音量ダウン+電源ボタンで撮れるようになったり、Twonky BeamでDTCP-IPが使えるようになったりします。心なしか無線LANとDiximの調子もよくなったような。
Ice Cream Sandwichのイースターエッグ
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プリインストールアプリの無効化ができるようになり、
必要のないアップデート要求から解放されます。 |
とっつきにくいTwonky Beam。
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Diximと同様にDTCP-IP対応になりました。
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(2012/12/8)
Arrows Tabのワンセグは感度も画質もよくなくて、あまり使い物になりませんが、SONYのnasneのライブチューナー機能を使えば、DiximやTwonkyでテレビのリアルタイム視聴が可能です。数秒の遅延や若干のカクツキはありますが、安定性や画質はワンセグとは比べ物になりません。ということをレポートしようと思っていたのですが、忘れてました。なかなか便利です。
(2013/12/29)
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